白老町 北吉原駅 



  この駅の近くに私の祖父の家があった。幼い頃よく遊びに連れてこられた。
  だがいつもこの町に近付くと漂ってくる独特な臭い(今はしない)と
  巨大な工場の景観、空に轟く煙りが恐く憂鬱な気分に襲われた。
  すぐそばにあったのについに訪れなかったこの駅がずっと気になっていた。
     
 



   大平洋が見える国道36号線を札幌から
   室蘭方面へ。
   ここは苫小牧。
   北吉原駅は白老町にある。
   この寒々とした海の色が見えて来ると
   もうすぐだ。

   ここからかなり遠くまで遊泳禁止の海になっている。
   夏でも相当くすんだ色をした白波立つ海である。
   何も言われなくても泳ぐ気はしない。
   (景観に実質がともなっているというのか?)
        




スバル冥土行き号。
お約束の廃車。






  海岸の畳屋。
  「海×タタミ」ってシュール。

  そういえばつげ義春のマンガにありそうな感じ
  の風景だ。
  湿地と家屋の「のっぺり」具合がとてもあう。
 





  塩分を含んだ風や強い風雪にやられて
  この瓦解状況。

  国道はセメント工場やその他重工業系の工場が続き
  ひっきりなしに通るダンプやトラックで歩道すら
  歩くのは危険だ。
  すぐに口内が砂や車紛でざらざらになってしまう。
    



        白老町 北吉原駅    


  吉原駅に到着。
  立派な駅だが今は無人駅。
  昭和40年設置の橋上式駅舎。
  駅の裏に大昭和製紙工場が圧倒的なボリュームで
  そびえたつ。
  駅名は製紙工場が静岡県吉原市で操業を
  開始したことが由来だ。
  




  無闇に広い構内。
  でもとっても清潔。
  でもとっても陰気なオーラを
  発散していた。





  運賃表。

  誰かのいたずら書きが白ガムテームで隠されていた。
  室蘭の下に続くのは
  西ドイツ 6万3000円、黒海 8万5000円、シベリア11万2340円
  西ドイツ...。このチョイス・・・。

  この駅のフィーリングを完全に理解している。
 



  車掌室。
  テーブル上のボックスには
  「北吉原駅列車接況表示盤」
  の文字。
  



  至る所にこの正方形の窓がある。
  この窓は工場の雄々しき姿を見せんが為
  作られた。(に違いない)
  ど真ん中にジャストミートされた「大昭和
  白老工場」の文字。
  この薄暗いコンクリートの壁の色と質感、窓の形状が
  見る者の叙情を盛り上げる。








                大昭和製紙白老工場

  昭和35年10月、白老工場の操業が開始される。のち約20年にわたり増設されつづけ
  この景観になった。とにかく毎日毎日煙りが大量に吐き出される。
  この風景を駅で一人佇みながら工場を見ていると感じるのは「せんちめんたる」という
  よりは「胸騒ぎ」だ。




  手すりから線路を見下ろす。

  チップ(木片)を運ぶ列車が、室蘭から製紙工場のある
  白老まで行き来している。
  この黒い貨物列車は子供の頃から何度も見ている
  おなじみの列車だ。





  おまけ

  現在使われている大昭和製紙
  の職員さん専用のアパート。
  敷きつめられた落ち葉の色、
  公園の雰囲気、まるでロシア。





  使われなくなった方
  のアパート。
  少々離れた場所で
  山を背にひっそり立っていた。
 


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